前回は「抜歯の洗礼」について語ったけれど、そこから先も旅路は決して平坦ではなかった。毎月の調整後は噛むたびに鈍く響く痛みに耐え、食卓には柔らかく煮込んだラーメンや蒸しパン、お粥が並ぶ。繊維質の食材は器具に絡まり、人前での食事中は“挟まっていないか”という不安と常に同居していた。顎間ゴムの装着が始まれば、さらに会話がぎこちなくなる……まさに忍耐の連続。
↑ざっくりとした経年の変化。
けれど、その先に見えた変化は想像以上だった。歯並びが整いはじめるたび、笑顔が自然と増える。顎のラインはシャープさを増し、顔全体が洗練されていく錯覚さえ覚えた。以前より丁寧に歯を磨く習慣が身につき、ホワイトニングをしていないのに歯が輝きを増した気がする。器具を外す日が来なくても、かつての歯並びに戻るくらいなら、このままでも構わないと、心からそう思えたほどだ。
↑2021年9月の誕生日、もらった花束を抱えて撮影。まだ歯並びに隙間が残っているけれど、早くもかなり整列し始めている。
そして迎えた“ブラオフ”の瞬間。3時間に及ぶオフと検査、リテーナー装着を終えた後の解放感は言葉にならない。何より、舌で触れた時に初めて味わう、なめらかで均一な歯の感触。思わず一日中、口の中を探るように過ごしてしまったほど。一方で、奥歯の虫歯など予期せぬ課題に直面するケースもあり、歯の健康維持が決して終わりのないプロジェクトであることを実感させられる瞬間でもある。しかし仕上がりは期待以上。これから数年はリテーナーと共に歩むが、ブラケットと過ごした日々を思えば、恐れるものは何もない。
↑ブラオフ当日のビフォーアフター。お疲れ自分!
そして、気になる費用。自分の備忘録も兼ねて下に載せておくので、参考になれば幸いだ。※
⭐︎歯列矯正に掛かった総額(税10%込)
・抜歯代(9本) 55,000円(入院費込)
・ブラケット代 660,000円
・毎月の調整料 5,500円×40回
・リテーナー代 33,000円
・その他 歯磨き粉等の備品代 54,000円
合計 1,000,000円
矯正を検討する人にとっては高額に映るが、それ以上に「歯並びと自信」という無形の資産を得られると考えるなら、決して高い買い物ではない。
ただし、クリニック選びは重要だ。悪質な商法や過剰な請求が存在するのも事実であり、事前の情報収集は欠かせない。矯正は一時的な美容ではなく、数年単位で生活と共に歩む医療行為。だからこそ、自分にとって納得できる選択が求められる。
結論として言えるのは、歯は健康の要であり、同時にその人の印象を決定づけるパーツでもあるということ。私自身が4年前の自分に戻れたとして、迷わず何度でも「GO」を出すだろう。得られたのは単なる整列した歯ではなく、金額を超えた幸せと自信だからだ。
※歯列矯正は審美治療であり、病院や治療方法によって金額や結果に個人差があることをご留意いただきたい。