2021年5月、ついに私は長年の願いだった歯列矯正へと歩み出した。コロナ禍の日本では、誰もが当たり前のようにマスクを纏っていた時代。人目を気にせず矯正を始められる、これ以上ないタイミングだと感じた。
20代前半から「いつかは」と思い描いていた矯正への道。きっかけは、歯科助手だった友人が語ってくれた“美しい歯並びの持つ力”だった。今振り返れば、その言葉が私の背中を押し続けてくれていたのだと思う。
方法について迷いはなかった。数年にわたるリサーチと、矯正経験者の声に触れたことで、私の中ではオーセンティックなメタルブラケット一択。友人の紹介と自らの調べが重なり合い、最終的に地元で唯一信頼できると思えた矯正専門クリニックに巡り会った。矯正認定医によるカウンセリングは誠実そのもので、「今すぐ決めずに、一度持ち帰って考えてください」という言葉が、むしろ決意を固めるきっかけとなった。※1
↑2016年9月。元の歯並びが分かりやすい動画を切り抜いたら、歯並びよりも若さに感動した。
矯正前段階では、レントゲン撮影、歯型の採取、スペースを確保するためのゴムの装着などを経て、6月には上の歯にブラケットを装着。続く大きなステップは“抜歯”だった。「ここで処置ができない」とのことで紹介された大病院で、私は想像を超える体験をすることになる。
↑2021年6月1日、まずは上の歯にブラケットを装着。
親知らず4本、スペース確保のための4本、さらにレントゲンで初めて判明した過剰歯1本。合計9本の抜歯は、私の矯正生活の中でも最大の試練だった。名医と呼ばれる先生の“ゴッドハンド”に救われながらも、麻酔が切れた後の痛みは想像を絶するもの。出血と腫れに悩まされ、3度の通院と最終的には過剰歯の摘出のために入院まで経験した。人生で初めて全身麻酔を受けたのもこの時。
この過酷なプロセスは、今振り返っても「矯正生活の中で一番つらかった瞬間」と言い切れる。けれど同時に、それを乗り越えたからこそ今の自分に自信が持てるようになったのも事実だ。※2
次回は、治療費の全貌とブラケット生活の日々について綴っていきたい。矯正は単なる“歯の治療”ではなく、自分を磨くための長い旅。その一歩を踏み出したあの日から、私の人生は静かに、しかし確実に変わり始めている。
↑2021年8月。よく見ると抜歯後で顔が腫れている。
※1 矯正治療は原則保険適用外。検討している方は、時間をかけて調べ尽くすことを強くおすすめしたい。もちろん後悔は微塵もないが、私にとっては留学・自家用車に次ぐ大きな投資だった。
※2 抜歯の有無や本数は症例によって異なる。医師と徹底的に相談し、自分にとって最適なプランを見極めてほしい。